西加奈子さんの作品の中でも「漁港の肉子ちゃん」はベスト3に入るかな?っていう印象です。
それぐらい名前のインパクトもあり、また内容としても暗さより明るさが目立つ作品なんですね。
西加奈子さんの作品って最終的にはしっかりと読んでいる人が救われる内容なのですが、ちょっと暗いかな〜ってところがあるんですよね。
でも漁港の肉子ちゃんに関しては、全体を通して暗い部分がほぼないんです。
そこが一番印象的なところです。
そんな漁港の肉子ちゃんのあらすじや感想について書いています。
西加奈子「漁港の肉子ちゃん」のざっくりとしたあらすじ
おなじみですが、まずはこんな感じだよーっていう雰囲気がざっくりわかるあらすじです。
主人公は肉子ちゃんの娘である、きくこ。漢字は喜久子。
実は肉子ちゃんの本名も同じきくこで、漢字は違って、菊子とかきます。
ただその丸々しい体型から肉子ちゃんと呼ばれています。
この肉子ちゃんは絵に書いたようなダメ女ですぐに男に騙されては、借金を肩代わり、そしてそれを夜のお仕事で返すという生活をしています。
それに呆れているのは少し賢い子供である菊子ですが、二人が最後に行き着いたのが東北にある田舎の漁港です。
そこで始まった生活では、地元の人に愛されながらも生活する肉子ちゃんとその中で精神的な成長をとげる菊子の姿が描かれています。
「ただの親子の話でしょ??」と一見思ってしまうんです。
でもかなり辛い経験をしながらも強烈な明るい性格で生きる肉子ちゃんの生き様に全く退屈をしないんですよね。
そして対照的に、頭が賢く冷静、そして見た目もキレイな菊子がそんな肉子ちゃんに色んな感情を抱きながらも変わっていくところが読んでいて飽きないんです。
正直これを書いている時も「うーんあらすじを言えっていわれてもな・・・」とおもってしまうある意味ストーリーのない作品なんです。
なのにこれだけ面白いっていうのが凄いところです。
漁港の肉子ちゃんの感想
あらすじでは上手く伝えることが出来なかったんですが結局この作品でも西加奈子さんがいつも描いている自意識とありのままの戦いなんですよね。
主人公である肉子ちゃんの娘の菊子は、だらしない肉子ちゃんを見て、
「本当バカだなー」
「頭が悪い」
「なんともセンスがない」
といつも感じているんです。
でもどこかでそんな肉子ちゃんにホッとさせられたり、羨ましく思うところがあるんです。
例えば作品内でこんなシーンがあるのですが、
菊子がマリアちゃんという友達の家に誘われます。
でもそこではあるクラスメイトの悪口がされることがわかっていて、正直菊子ちゃんはその子のことが嫌いでも何でもないんです。
だから何だかその子の家に遊びにいくのが億劫になっていました。
その行きたくなさそうな菊子ちゃんに、肉子ちゃんははっきり言います。
「それやったら行かんかったらええやん!」
と。
その一言で菊子ちゃんはすっきりするんですよね。
他にもこういったシーンがいくつもあります。
ようは菊子ちゃんは周りの目を気にして本心とは違う行動をしてしまったり、本当に言いたいことが言えなかったりする自分を嫌に思っているんです。
でもそういったことを何も気にせず出来てしまう肉子ちゃんを、さっきも言ったように羨ましくおもっているんです。
確かに自分に置き換えても周りの目が気になって本当にしたいこと、言いたいことが素直にできないことって良くありますよね??
そんな自分を菊子と重ねてしまうんです。
そして自分も菊子と同じように、肉子ちゃんを軽蔑しながらも、どこかで羨ましく感じているんです。
そうした共感がこの2人のやりとりから生まれるんですよね。
そして物語が大きく進むのは、ある日菊子が盲腸で倒れてしまうことで起こります。
その時に、ネタバレになるので言えませんが、菊子は初めて素直になれるんです。
自意識にとらわれていた自分が阿呆らしい〜〜〜〜〜〜〜〜
っていう具合に解き放たれるんですよね。
これは他の西加奈子さんの作品でも多いパターンなのですが、漁港の肉子ちゃんでもこの大きな転換が最後の方であります。
それを見て、僕らも「ああ、何を気にしていたんだろう。」と肩の荷がふっと軽くなる瞬間でもあるんです。
まとめ
漁港の肉子ちゃんは
・男運がないなーって人
・親のことが嫌いだーって思ってる人
・何だか人の目ばかり気にしているなーって人
に読んで欲しい作品です。
他にも西加奈子さんの作品が面白いって聞いたけど、どれから読めば良いか迷っている人にも一番はじめにおすすめ出来ます。
ぜひ読んでみてください!